別れ
「もうさよならかぁ」
「・・・・・・・・」

その言葉に思わず、冷や汗が出た気がした
世界が違うのはわかりきっていたことだった。
服装も戦闘スタイルも、ましては魔法まで何もかもが違ったのだ

しかしその言葉に素直に悲しいと言えない自分が
何よりも恨めしかった。
かと言って言えたとしても、言葉が外に出ることなど滅多になかった


「スコールはさぁ、おれのこと忘れない?」
「…あぁ」
―どうして忘れられるんだ?
それは忘れてほしいのか
そうでないのか、

聞き返すのは億劫だった。
「おれ、忘れちゃうかも」
「―ッ」
顔をあげてバッツを見つめた
今、自分がどれだけ情けない顔をしているだろうか
また自分がどれだけその言葉に傷ついたのだろうか

気づけばまた視線は地面で
彼を、バッツを見ることが完全に出来なくなった。
手を伸ばせばすぐに隣にいるから、届くのだ
そばにいるのだ

スコールは自分の思考に埋め尽くされ、ついに顔を上げなくなった。
バッツはそれを見て、頭をやさしく撫でた。

「ごめん」
「・・・・・」
「ごめんな?」
きっと彼は悲しい表情をしてこちらを見ていることだろう
だが、その表情さえ見れない自分は何て子供のようだろうか
・・・・違うんだ、違うんだ


「最後もさ、ちゃんと笑ってるからさ、」
「・・・・・(そんな声で話しかけないでくれ)」
「だから、スコール。泣かないで?」


泣かないで?
・・・・・・・・・・俺が?・・・・・泣く?
そこでようやく顔をあげた。
すると、とてもやさしく笑っているバッツが至近距離にして

「スコールは泣く姿もきれいなんだなぁ。惚れ直しちゃった」
「・・・・・・・・・・」

触れられた場所が熱いのは泣いているからだろうか
それとも、・・・・



俺は弱い自分に別れを告げた。

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