「たまには笑ったらいいのに」
「・・・・・・(何でそうなるんだ)」

スコールは隣に座り込んだバッツに視線だけを向けた。
先程まで言葉を発した当人は、ジタンとふざけてじゃれあっていた。
いつものことだと思ってガンブレードの手入れをしていたら、突然声をかけられたのだ。

―どう返せばいい?
言葉を選んでいると、目の前に顔がぱっと出てきて

「こうやって笑うのとかさ、ダメ?」
視界に広がる彼の笑顔は、とてもまぶしかった。
自分にはない笑顔
自分にはない明るさ

―別に笑わない訳じゃないんだけどな、
「いや、」
「んん?」

バッツの顔を見たら、言葉を飲み込んでしまった。
直視出来ずに瞼をふせてしまった。
―何か応えないと・・・・しかし、

まさか顔を見たら応えられなくなっただなんて、恥ずかしくて言葉にも出来ない
スコールが話すのをバッツは待っていたが、

「綺麗なのに」
「?!(何を、)」

顔を上げたら、バッツの手で頬を包まれた。
そして片手で傷をなぞられて
またあの笑顔だと思えば、すぐに真剣な表情に変化する
スコールはただただその行動や表情を見つめるだけで



「たまには本気で相手してよ」
「   」

そんな言葉に声が出せない
俺があまりにも動かないでいると、バッツはまたにかっと笑って

「ごめん、出直して来ます!」
明るく響いた声で風のように去って行った。


自分で同じように傷をなぞった。
どうやったらあの笑顔に応えられるのか、
どうやったらあんなに自然に触れられるのか

眉間に皺を寄せて考えることが増えたと思ったが
すでに顔だけでなく、彼自信でいっぱいだと気づき、思考を止めただただ地面にむかって俯いた。


まだこの気持ちに名前をつける勇気はありそうにない

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