『人を斬るような感覚だ』
あの言葉が全身を駆け巡ったのは今でも覚えている
その言葉で一気に突き落とされた気分だった


年下って聞いたときは驚いたけど(だって年上そうじゃん?)
その言葉にあまりにも現実さが纏わりついてなんとも言えない感覚だった
可哀想とかそんな単純な言葉で片付けられないけど、そんな感覚に似た気分に陥ってしまった

「バッツ、ここにいたのか」
「おー」
ほら、座るだろ?と声をかけて大抵は断れるはずなんだけど
スコールはバッツの隣におとなしく座ったので、逆に驚いた
「……すまない」
「はは、なんだよ」
スコールの言葉に驚いたのは2回目だ、とバッツは思った
なんだかなぁ、こっちが調子狂うなぁ……らしくもないぞ?

「あやまるのはこっちの方だけどな?」
「?」
「前にさ、」


『イミテーションを斬る感覚?』
『そう!何か氷を切ったような感覚なんだ!』
『………』
『スコール?』

『人を斬るような感覚だ』

スコールはその話を思い出して、あぁ、と小さく答えた
「他に答えが無かったから」
「うん、何かわるいこときいたから」
「悪い?」
今日のスコールはとても歯切れが悪くてまるで別人みたいだ
バッツはだーっと声を出してそのまま体を伸ばして倒れ込んだ
隣の彼はそのままじっとしているだけだった

「スコールの姿をしたさ、イミテーションを見たら斬れないかもしれない、とか甘いこと考えちゃってさ?
いや実際は戦うわけだから倒すんだけどさ、何だかスコールを斬ってみるたいで嫌で
それもスコールはいつもイミテーション相手にそう感じとっていた何て何だか悲しいなって思っただけ」
随分と早口で自分でも何を言ってるかさっぱりだった
しかし本音は本音だった

あの言葉がまるで死の淵に立たせるような凍りついた言葉に聞こえて、とても嫌だったんだ
バッツは目を閉じてそのまま深呼吸をした
すると唇に何かを押しつけられた


「スコー…、」
「……あんたらしくないな」
座りこんだ体勢から覗き込むように口づけをされた
そのまま手を伸ばして捕まえたい気分だった

スコールの長い髪が顔にかかってくすぐったかった
「うん、スコールらしくない」
「何の話だ?」
「ん、こっちの話」

どうやらたまに考えすぎるといいこともあるようである
先ほどとはちがい、夢と現実の間の淵にたっているようで心地が良かった

バッツは今度は自らスコールに口づけた



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