氷塊
※普段書いているお話より少しだけ暗いです。ご注意下さい。



−真っ暗
−重い音のない世界


ああ、何度目の目覚めだろう?
今度はどちら側なんだろうか?

バッツは濡れた髪をかきわけながらあたりを見なおした


「スコール・・・」
ああ、これは、
バッツは目の前にいる青年を見て立ち止まった
名前を呼ばれた彼は驚いたようにバッツをにらみつけていた


そうか、今回はダメだったのか
その瞬間、瞳が揺れた
「そんなに睨みつけなくたって、おれは逃げないぜ!」
「・・・」
「はは、信用ないんだな」
ガチャ、と差し出されるガンブレード
バッツはなんなくそれと同じものを出して見せた
スコールは動揺を隠せずにいた

そのちょっとだけ視線を落とす仕草が好きだった
だった?
いや、今も好きなんだけど
覚えている時はずっと好きだ、忘れている時はわからない
今回はダメだった
別れた
スコールには出会えた
それだけでも喜ぶべきことであろうか

わかっていることは、スコールは覚えていなかったのだ
彼は何度だって立ち向かってくる
共に戦う時もあった
ああ、あの時は楽しかったな・・・、あ

ピッと剣筋が頬をかすり、鮮血がにじんだ

彼は語らない、口では語らない
目では何を考え事をしているのだ、と言わんばかりにぴりぴりとしていた
集中力が高い彼は、完全におれを倒すことだけになっているはずだ
バッツはそれを少し哀しく思った

スコールは魔法が得意、でもおれも魔法は得意
スピードだって多分負けていない
しかし、戦闘用に鍛えられた彼の反射神経は、時に何をしでかすかわからない
何度かそれで敗けたこともあった・・・気がする
でもそれさえも彼は覚えていないのだ
バッツのマントがひらひらと揺れた


どす、とにぶい音が響いた
愛する彼が崩れ去る音、否自分が崩れ去る音


ああ、今度こそ
今度は、どうか

もう少し陽のあたる場所で、彼に会いたい
そうすれば、この冷たい気持ちは少しは溶けてしまえるだろうか?

バッツはガンブレードを握り直して立ち上がった
スコールを倒すために

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