別れの瞬間
「スコール?」
「・・・・・・ッ」
「スコー「さ、わるな!」
“恐怖”に縛り付けられた
目の前に立っている人物を視界に入れるのが何よりも怖くて
気づけば、右手に持っていたはずのガンブレードが
ガタンと音をたて地面へと落ちていた
「このぐらい大丈夫だから」
「・・・・・・」
―大丈夫?このぐらいが大丈夫だと?
スコールは震える体を何とか動かして、バッツから離れた
動揺、よりも酷かった
―何故彼が傷を負ったのだろうか
―何故彼は自分をかばったのだろうか
―何故彼を守れなかったのだろうか
“何故”と問うてはならない
しかしスコールはこの状況でひたすら自問自答することしかできなかった
地面にはすでに姿を無くしたイミテーションの残骸が消えかけていた
そしてポタポタという音が耳を支配した
次の瞬間に気づいたのはあの赤い液体
バッツのわき腹から流れるそれに、スコールはすぐに持っていたポーションを弱々しく彼に差し出した。
何よりもバッツのあたたかさに触れることが怖くて
すぐに手を引っ込めた。
「ありがとな」とバッツは笑ってすぐに治療したおかげか、傷はすぐに塞がっていった
布を汚すそれはまだ独特の香りと色を残したままだった
・・・・・・血は苦手だ
まさか自分がそんなことを思うとは思わなかった
どう言っていいかわからないが、苦手、と思ったのだ。
「すまなかった…」
「別にそんなに落ち込むなよー!ちょっとおれがヘマしたぐらいでさ〜」
「全て俺のミスだ」
「だから」
「…俺のせいだ」
はっきりと言って欲しかった
自分が悪いと、バッツからその言葉を聞きたくて
咎めのその言葉が欲しくて
すがるような思いでようやく顔をあげることが出来た。
夜だったため、あまり表情を見ることが出来なかった
だがバッツはそのまま一歩自分の前に出てきて、笑顔を見せた
「スコールは悪くないよ。うん、悪くない」
「・・・・・・」
「だから、そんな泣きそうな顔するなよ」
子供のように頭をわしゃわしゃと撫でられた
その手があまりにもあたたかくて
ただただ地面の方をうつ向いて、ぶつけようのないこの気持ちと向き合った
―きっと今言わなければいけない
スコールは顔をあげた
「バッツ、その、」
「ん?」
「・・・・・・ありがとう」
「うん!」
失う恐怖は消えない
そして弱い自分に別れを告げた
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