あの傷ついた表情は今でも頭の中に焼き付いている
『そういうの嫌いなんだ』
『―ッ!!』
-butz side-
スコールが怪我をした
バッツがしくじったせいで
目の前が赤くなって、自分が斬られたと勘違いしたぐらいだった
痛みはなかったのだ
痛みで顔を歪めたのはバッツではなく、スコールだった
「スコール!!!」
「・・・」
「お前、ばか、何して・・・!!」
スコールはバッツの手を振り払った
バッツはそれに驚いて何もかもの時間がとまった
動いているのは溢れているスコールの鮮血だけだった
「スコール?」
「触るな」
吐きだされた言葉とても冷たかった
ざわっと風が吹いた
バッツの心も風が吹きつけてきた
「あんたは怪我してないんだ。それでいいだろ?」
「・・・スコール?」
「俺に構うな」
「・・・それどういう意味だよ」
どくん、と脈の打つ音が跳ね上がるように聞こえた
ぽたぽたとスコールの血は地面へと吸収されていっていた
なにか、よくわからないけど、とてもイライラしていた
うれしくなかった、スコールがそんなこと言うことが
理解したくなかった
「おれが怪我してなければいいのか?スコールが怪我しててもか?
それおかしいだろ?何が言いたいかわかってるか?」
「・・・」
スコールは驚いたような顔をして、そのあと哀しそうに顔を横に振った
理解できない、と
「今さっき、どれだけひどいこと言ったかわからないのか?
構うなって。そんな怪我してるのに。スコールが、」
バッツは途中で言葉を切った
スコールは理解できなさそうに、不安そうに止血しながらうつむいていたからだ
ざわざわっとまた風が吹いた
とても気持ち悪い風だった
「そういうの嫌いなんだ」
「―ッ!!」
スコールがばっと顔をあげた
嫌いだ、自分を大事にできないやつなんて
自分が傷ついて、それで心配したり傷ついたりする人がいることに気づかないやつなんて
今までもなんとなく気づいてはいた、スコールはそういうことに鈍いということを
風が気持ち悪かった
スコールの血の匂いが混じってるいるからかもしれない
でもこういうことはいつか自分で気づかないといけない
バッツはわかっていた、理解していた
だからこそ、スコールにはっきりと想いを伝えた
それでスコールが傷つこうと、バッツはスコールのことを信じていたから
今にも泣きそうな子供な表情を一瞬見せたような目の前の愛しい人は、すぐにいつもの無表情に戻った
そしてそのまま、逃げるように走り去ってしまった
地面には乾き始めた彼の血が残っていた
風がともて気持ち悪かった
バッツはスコールの傷を治さなかったことを少し矛盾したように後悔した
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comming soon
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