眩暈
ぐらん、と視界が歪んだ


―眩暈?

スコールは一瞬立ち止まった
夜の静かな風がそよそよと流れて行った
彼自身の髪が少し揺れていた

「・・・・・・」
また何事も無かったように歩き出した
スコール以外は誰もいないような世界が続いた
バッツとジタンと別れてから随分と長い時間が過ぎた気がした
多分思い込みだろう、まだ時間など・・・


スコールはまた立ち止まった
「・・・(休むか)」
どうも今日は調子がいいとは言えないらしい
「また」眩暈がするのだ
夜は奇襲にあったとき非常に不利なため、定期的に移動していた
しかし傭兵に仕立てられたスコールにも少し「疲れ」というものが出てきているらしい
体調が悪いということはそれだけで足を引っ張る要因であることは間違いない

まともに睡眠という行為をとったのはいつだろうか?
星が降りそそいでいる空を見上げてスコールは考えた
「(ゆっくり休みたいな)」
瞼を閉じれば真っ暗な世界が広がる
スコールは静かに眠りに落ちて行った

『スコール』
『スコール』

「・・・バッツ?」
目の前にバッツがいた
スコールは茫然と立っていた
何もない世界
ただ目の前にバッツがいるのだ。

ああ、これは夢かと思って目覚めようとしたらバッツが声をかけてきた


『おれがそばにいるから・・・』


「スコール?」
「・・・ぁ?」
寝ぼけているのだろうか?
夢の中のバッツが目の前にいるのだ
スコールは口をあけたまま、しばらく座り込んでいた
バッツは不思議そうにスコールを観察していた
月が一瞬雲で隠れ、互いの顔を影が通り過ぎていった。

「疲れてるんだな、いいよ、寝てて」
「・・・お前は」
「眠くなったら寝るから、スコール先に寝たら?」
ぐらん、とまた視界が揺れた
何故か脈を打つ速さが上がった気がした

この眩暈はなんだろうか?
バッツの笑顔を見たらまた眩暈がした

多分これは恋というものかもしれない
スコールは少し自嘲しながら眠りに落ちた
自分はそのままバッツに落ちたかもしれない

スコールが眠ったのを確認するとバッツは愛しそうに彼の髪に触れていた

遅くなりましたが5月8日おめでとう!
58DAYに感謝!


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