溺れる
―コポッ
―この青さに飲み込まれたら心地よいだろうか
―あぁ、屈折して見える月の光が綺麗だ
―水は・・・
―バシャンッ!
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
「・・・・あれえ、スコールぅ?」
飲み会の席から突然ふらふらとバッツが消えた
風にあたってくると言って消えてしまったらしい
しばらく戻ってこないのを不思議に思ったのを口実に、酔っ払いたちであふれ返った場所からスコールは離れることに成功した。
「あんた、酒じゃなくて水に溺れるのか」
「おお!いいこと言うなぁ」
スコールは近くの湖まで行くと、そこでバッツを見つけたのだ。
沈み行く彼を見て、俺はまた失う恐怖を思い出し
そのまま飛び込んだ。
しかしバッツはへらへらと自分の前にいて、多少後悔した。
「・・・戻る」
「あ、ちょっと!」
「・・・・・なんだ」
戻ろうとして引き止められた。
ぎしぎしと左腕を掴まれて顔を歪めたのは言うまでもない
酔ってもこの力なんだな・・・
―ざわ、と風が吹いた
「俺はいつでも本気だから、」
「・・・・(何が、だ?)」
「スコールに溺れさせて?」
「―ッ!?」
水で冷え切った頬に熱が触れたのは気のせいだろうか
気づいたら目の前にポタポタと水をたらしているバッツが視界を埋めた
唇を塞がれたのはそれからすぐのことだった
どちらが溺れているのだろうか、と
考えるのに時間はかからなかった
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