chocolate
「今何時だと思ってるんだ」
「夜だな」
「それぐらいは俺にもわかる」
「じゃあ邪魔するな」
「ここは俺の部屋なんだが?」
「・・・・・・」

サイファーはそのまま溜息をついて、とりあえずコートを脱いだ
任務が長引いて疲れて帰ってきたら珍しくスコールがいたのだ
くそ、なんかのサービスかと思ったぜ

しかしスコールは勝手に上がりこんで(多分この表現が正しいはずだ)、それも何故かこんな時間()に人様のキッチンを使って何を作っている
それもそれが俺様宛の料理ならまだしも、完全に自分のために作っている・・・そんな空気をメラメラと感じられるからだ
にしてもあんなに散らかして・・・まさか俺が片付けるのか?

ちらり、とスコールの方を見れば
飛び散った小麦粉にクリームらしき白い物体たち、卵の殻は下に落ちている、どこかで買ってきたスーパーの袋はぐしゃぐしゃ
使ったボールや皿、他の調理器具はすべてシンクへとぶちこめられていた
リアル男の料理というやつである。それもスコールが料理するなんて聞いたことねぇ・・・
「おれ風呂入ってくるからなー」
「・・・・・・」
「味見ぐらいさせろよ?」
「・・・」
どうも今日は不機嫌らしい
一人でしゃべっていても時間の無駄でしかなく、すぐに温かいシャワーにすがりついた
そういえば、さりげなく浴槽にお湯がためられていてその光景にサイファーは嬉しそうに目を細めた
鼻歌まじりに髪を洗っていると、部屋から大きな音がして飛び上がった。

「・・・スコール?お前何してるんだよ」
「気のせいだ、サイファー!!」
「・・・・・・」
スコールが叫ぶと同時に皿が割れた音がした
ゆっくりとバスタイムを楽しもうとしていたサイファーはすぐに上がり、濡れたままの髪で戻ってきた


「おー派手にやったなぁ」
「うるさい」
サイファーの目の前はある意味パーティ状態だった
先ほどの惨状に加え、皿が2枚も割れていた
ていうか割ったら普通片付けないのか?
スコールはオーブンの前で微動だにしないで見つめているのだ。サイファーは溜息をつきつつ、片づけをし始めた
「せっかくロ〜マンティックな夜が過ごせるかと思えば、片づけとはな」
「・・・・・・」
「あ、いてッ!」
ツプウと指先から赤い液体があふれ出てきた
どうも今日はツイテイナイらしい、サイファーは破片で切った指をぺろりと舐めるとスコールは申し訳なさそうにうなだれてしまった。

「なあ、いい加減に「クリスマスケーキの練習をしようと思った。でも失敗した」
差し出された黒いものが視界を支配した
スコールは立ち上がって、絆創膏を手に取り器用にサイファーの指に巻きつけた


「クリスマスより俺の誕生日ケーキを作ってもらいたいもんだな。できればチョコで」
「あんたチョコが好きだったのか?」
「なんだ、俺のために作ってるかと思ったぜ」
作りかけのクリームをなめとれば、スコールは恥ずかしそうにうつむいた
はは、こういう仕草も嫌いじゃない


「今度は失敗しないように努力する」
「おう」
そのままクリームを口に含んで、口づけた。
たまにはビターなチョコもいいかもしれない

明日にはケーキを作り始めた理由は聞けるだろうか?と考えながらサイファーはスコールと共に片づけを再開した。

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