よくある話だと思っただろ

『今日は部屋に来るな』

報告書を提出しに行ったことだった
任務終わりにそのまま直行したら、ラッキーなことにスコール様しかいらっしゃらなかった
しかし彼は妙に不機嫌で
サイファーの方を一度も見ずに、そう言ったのだ

くそ、この２日で俺が何をしたっていうんだ！
サイファーは近くの空き缶を蹴りあげた
せっかく帰還してそれかよ!
あまりにもイライラしたので、そのまま出て来てしまった
スコールはちらりと視線を送ったが、すぐにそらして作業を進めていた
それが余計に腹立たしかった

最近よくけんかはしていた
いや、俺たちにとってけんかは日常茶飯事に近いものがある
大抵はお互いの勘違いか、くらだらないささいなことによるものだった
今回の原因はなんだ？
行く前はいたって普通だったよな？
サイファーは立ち止まって空を見上げた
空はすでに橙色に染まり、日が沈みはじめていた

飯は・・・
本当ならスコールと食べる予定だった
先約はなくとも、勝手に食べることになるのだ

サイファーはふと目に入ったホットドッグを購入し口に突っ込んだ
ピクルスの味はまあまあだった
しかしマスタードがまずかった
自分で作る方がうめえだろうな
気づけばガーデンにたどりついていた

もうその頃にはイライラはどこかに消え去ってしまった
夜の空気は少し冷え込んでいた
サイファーの頭のシャワーを浴びることでいっぱいになっていた


「あ、」
「・・・」
「サイファー、」
ああ、元凶め
また思い出してきたじゃねーか
サイファーは一気に何かが醒めるのを感じ取った
スコールは今あがったのか、大量のファイルを抱えていた

「指揮官殿、お疲れ様で？ちゃんと夕食はお召し上がりになられましたか？」
「サイファー・・・」
今日は嫌味ばっかり言ってやるからな！
今回の俺様は悪くないんだからな！
サイファーは戦うつもりなぐらいの熱気を出し始めた
それとは逆にスコールは溜息しながら答えた


「今日は・・・何も食べてない」
「は？」
サイファーは拍子抜けした
何も食べてない、だと？
おいおい、どうしたっていうんだよ、風邪でもひいたのか？
いや、こいつが風邪をひくときは大抵熱を出す訳だが

「その・・・」
「風邪、じゃねえよな？」
「いや、ちが・・・あ、痛ひ」
「ん？」
スコールはしかめっ面をして頬を抑えた
なんだ、虫歯かよ、それならはやくそう言って、

「口内炎が３か所も出来て・・・いた・・・」
「は？」
「だから口内炎が・・・！染みるから一緒に食事は無理だから、断ったんだ」
サイファーは凍りついた

部屋に来るな＝(口内炎が出来ていて、一緒に食事できないから)部屋に来るな


サイファーはびっくりして、そのままスコールの口内炎をつぶすように唇を押しあてた
くそ、あの無駄な時間を返せ！！


タイトル＝口内炎