falling
―落ちるという行為について考えてみた
ものが落ちる、ということは目で見れば一目瞭然だ
万有引力の法則のように、りんごは下に落ちるのだ
スコールは冷めきったコーヒーを流し込みながら、またパソコンを打ち始めた
秋の日差しが差し込んできていたものの、少し冷えこんだ気がする
そして落ちるという行為であるが、物質的ものが落ちるということではなく
比喩的に表現したものは実際はどういうことをいうんだろうか?
スコールにとってそこが何よりも重要なことであった
別に落ちたということが気絶した、という意味合いで使いたい訳ではない
そういうものを求めているわけではないのだ
そもそも何故落ちるなのか?根本的な問題はそこなのかもしれない
『お前が好きだ』
スコールはあの言葉を何度も繰り返した
そもそも「好き」とはどういう意味だろうか?
この頃サイファーとは仲良くというよりは、ケンカばかりしていたので言葉の意味自体が理解出来なかった
まず男相手にいう言葉ではないことだけは理解しているつもりだった
だがあの男はいつでも本気のように振る舞いものだから、頭が痛くなったのだ
あんなことが無ければずっとこの問題について考えることはなかったはずだ
……遊ばれてるだけかもしれない
「……遊びには付き合えないな」
「なんだ、誰かに誘われたのか?」
「!?」
スコールが振り返れば、誰もいないはずの部屋に人が立っていた
オレンジの光を浴びてコートが夕焼け色に染まっていた
「…勝手に入ってくるな」
「なんだよ、お前が許可してくれるのかよ?」
キスティの席に腰をかけ、さらに足をのばしてテーブルの上に乗せるのはサイファーらしい
しかし行儀が悪すぎる
「サイファー邪魔しに来たなら帰ってくれ。仕事があるんだ」
「何だよ、告白したらずっと邪魔者扱いかよ。こっちは真剣だっていうのに」
「……」
―ああ、そうか
これが「落ちる」ということなのか
スコールは満足したかのように、サイファーを見つめた。サイファーはそれに驚いて足を地面へおろしてしまった。
気づけばサイファーの前に立っていた。
「どうやらあんたのことが好きみたいだ、サイファー?」
「はは、お前のそういう大胆なところも好きだぜ、スコール?」
多分これが恋に落ちるという行為に至るまでの経緯だと考えられる
コーヒーをいれなおそう、今度は二人分のマグカップを持って
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