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『クリスマスより俺の誕生日ケーキを作ってもらいたいもんだな。できればチョコで』
スコールはその言葉を反芻していた
そしてデジタルに動く数字を見つめて溜息が出た
「・・・・・・(あと少しで23日だ)」
車を飛ばしても間に合わなかった
助手席に投げられた白い箱が小さく舞っていた
『サイファー』
『んだよ』
『明日から『任務だろ?それがどうした?行きたくないのかよ?』
『・・・・・・』
スコールはもしも、もしもドラマのように叫べたらどんなに楽だろうと冷静に考えていた
泣きわめく女優よりはもっとましに言えるかもしれない
たった一言が言えなかったのだ
「ごめん」
と、誕生日に祝えないことを謝りたいだけだったのに
一週間前から何度もシュミレーションしてみたが、やはり本人を目の前にするとそれもうまくいくわけもなく
いつものように軽くけんか別れのようになり終わってしまった
・・・ケーキ作りかけだったのにな
本当は前日に渡すつもりだったケーキはきっともう食べれなくなっているだろう
しかしもとからあまりうまく焼けなかったのだから、食べたら腹を壊すかもしれない
結局着いたのは22日だったが、あとそれも30分で終わりをつげようとしていた。
「・・・(間に合わなかった)」
暗いままの自分の部屋に飛び込めば、ひんやりとした世界が待ち伏せていた
スコールはすぐに暖房をつけ持っていた荷物を投げ出した
「いって!」
「・・・・・・は?!」
スコールはすぐに後ろを振り返った
飛び散った荷物の中にまぎれもなくサイファーがいたのだ
この寒い部屋の中でこいつは何をしているんだ?
そもそも明りぐらいつけておいたらどうなんだ?
目を見開き、すぐ細めたあとスコールはそのまま着替えていった
特にサイファーも話しかける気配もなかったので、部屋が暖まり始めてようやく彼と向かい合うことにした
「不法侵入だ、サイファー」
「・・・もっと言うことがあるんじゃねーか」
「風邪ひくぞ、こんな寒い部屋にいたら」
「おい」
「あ、馬鹿は風邪をひかないって言うからな」
「・・・」
一瞬沈黙が流れた
「ああ?」
スコールはそのまま持っていた白い箱を出した
多分車に長時間乗せていたからつぶれているかもしれない
「あんたが好きだっていうから、買ってきた。でも崩れているかもしれない」
「・・・へえ、何だ、てっきりてづくりかと思ったぜ」
「無理言うな、そんな時間はなかったんだ」
「そうですか」
サイファーは受け取った白い箱を開けなかった
スコールはそれをひどく不安に思った
・・・やはり気に入らなかったのか?
それとも・・・、
「俺は手作り希望だったんだ」
「だから「だから食べた」
「え?」
うつむいていた表情がすぐにサイファーをとらえた
サイファーはその瞳を逃さなかった
「クリームがないのが残念だったが、でも前につまみ食いしたからな、それで許してやる」
「まさか・・・」
スコールはすぐに作りかけのケーキを置いておいた棚を見た
冷蔵庫に保存するほどでもないと思い、気温差がないところにおいておいたのだ
そこにはすでに皿しかなく、上にあるはずのケーキそのものがなくなっていた。
「あれは・・・作りかけで」
「でもお前が俺様のために作ってくれたんだろう?」
「・・・腹壊さなかったのか?」
「ああ?!お前また失敗したのか!」
「いや」
食べてもらえてうれしいんだ、という言葉がのどまで出かかっていたが、すぐにのみこんでしまった。
それを見ていたサイファーはスコールの肩を掴んで向き合わせるように姿勢をただした
「それより、スコール。ケーキよりも大事なことがある」
「え?」
「何か言い忘れてないか、俺に?」
そう言って笑ったサイファーがかっこよく見えたのは多分気のせいじゃない
祝いの言葉とともにそのまま身を任せた
happy birthday Seifer!!
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