あふれだす水の中で
「・・・・・・」
ぽたぽたとしたたる傘を持ちながら、下駄箱をあけると一枚の紙が入っていた
スコールはしばらくその紙を見つめたまま、どうするか考えていた

夏休みになってもバイトがない日は、図書館で宿題を進めていた
読書感想文さえ片づければ、あとは美術の課題だけである。

夏休みの学校は、基本部活で来る人以外は滅多に見かけなかった
その見かけないはずの、夏休みの日に
スコールの下駄箱の中に誰かが紙をいれたのだ。

「・・・(まちがいか、いたずらか)」
じわっと蒸し暑い風が吹き付けてきた
雨が降っているというのに、空気は熱をもっていた。

スコールは紙を持ったまま、図書館に向かった。
図書館は冷房が効いていて、いつも下校時間ギリギリまで居座っていた。


「スコール」
「?!」
ちょうど15時ぐらいだった
スコールは音楽を聴きながら、うとうとをしている瞬間だった
まるで夢の中で呼ばれるような、そんな声がした気がして
現実に戻るまでに時間がかかった


「良かった、手紙読んでくれたんだな」
バッツは嬉しそうに笑った


手紙?あ、
スコールは机の上から埋もれている紙きれを手に取った
『今日15時ぐらいに、図書館に行くのでかえらないでくださいっ!』

「すまん、今読んだ・・・」
「え、まじで。でも良かった、はい」
「はい?」
渡された一枚のチケット
スコールは思わず上ずった声をあげた
「スコールの誕生日の日に一緒に行こうと思って、映画」
「映画?」
「ほら、これスコールが観たいっていってやつ。チケットとれたんだー!
 公開初日だからさ、取るの大変でさー!」
バッツはがんばった!とほめてくれ!と言わんばかりに胸をはった。
スコールは未だ映画のチケットを見つめたままだった。
まだ外は雨が降っていた

「あれ、まさか、予定入って、た?」
「いや、特に・・・」
嬉しい、と素直に伝えられない
スコールは無表情でどうしたらいいかわらからず、ただチケットをまだ見つめていた
「ふぅん」
バッツはスコールの隣に座り込んだ。
スコールは未だどうするべきか悩んでいた。


「スコール」
「・・・」
「スコール」
「・・・なんだ」
「誕生日はおれとデートだな」
「・・・(デート・・・)」
デートという言葉に反応した
ああ、そういうことか

「バッツ」
「んー?」
「・・・ありがとう」
スコールが恥ずかしそうにうつむきながら礼を述べた
するとバッツは嬉しそうに、にまっと笑顔になった。

Happy Birtheday !! Squall !!

<< back