雨上がりの君に
※学パロ58です






今日も雨だった
梅雨の時期なんて大抵は雨なのだ
スコールはだるそうに傘をさしてずぶ濡れになっている校庭に足を踏み入れた
このぐしゃ、ぐちゃ、となる感覚が大嫌いだった

靴は汚れるし濡れるし、いいことはなかった
それでもこのルートを通ることをあえてやめなかった
黒い傘が一人揺れていた
きっと彼は今日もこの土砂降りの中、部活をしているのだ

「・・・ぁ」
スコールは思わず小さい声が出た
流石にこの土砂降りでは部活も中止になったらしい
特にいつも近くを通るわけではなかった
柵をこえた先に小さく彼が見える程度なのだ
校庭に一人ぽつんと取り残されたスコールはなんともみじめな気分になった

「・・・・・・(何をしているんだろう?)」
空を見上げた
灰色の分厚い雲で覆われたあの空はきっとまだ晴れることを知らないのだろうか
スコールはすっかり濡れきった靴のままで進み始めた
ぱしゃぱしゃと歩く音とざあざあと降り注ぐ音とがまじりあっていた


「あ、スコール!」
「・・・!?」
予想もしないところから声がして思わず振り返った
すると傘も何もさしていないバッツが現れたのだ
なんでこいつもいつもこうやって・・・

「傘はどうした」
「うん、友達に貸した。忘れたって言ったから」
「お前は・・・」
「うん、ないから濡れちゃった。あはは」
そう言っていつものように笑われた
濡れちゃった?
もうずぶ濡れもいいところだろ?
スコールは少しためらったように視線を移動させ、すぐに傘をバッツに差し出した

「風邪をひくだろう」
「それはスコールも同じじゃん」
「俺はひいても休めるが、あんたは部活があるだろう」
雨は容赦なく降り注いできた
スコールも一気にシャツがすけ、髪もぺったりとなるぐらいにずぶ濡れになってきた

「じゃあここはあいあい傘だな、おれがもつよ」
「・・・いい」
「なんだよ、こういう時は喜べって。」
バッツは嬉しそうに傘を持ちスコールに近づいた
スコールはその瞬間、一気に体温が上がるのを感じた
雨は冷たかった
風もそこそこ吹き付けて寒かった
しかし血液は逆流するのではないかという勢いで全身をかけめぐっていた

「当分雨でいいかな、そしたらスコールとあいあい傘できる」
そのバッツの言葉1つで雨がやんだ気がした
今は校庭に1人取り残された気分から脱出したようだ

スコールは恥ずかしさを隠すためにひたすらうつむいていた
あと少し、雨が降っていますように
そう、願わずにはいられない


雨があがったらこの気持ちが伝わるといい
まだ空からは水が降り注いでいる



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