視線を向けて
※学パロ58です






「なぁージターンー」

「なに、その呼び方」
「おれ、恋してるみたいなんだけど、どうすればいい?」
ぶはっとジタンが飲んでたバナナオレを吹き出した
おれは視線はそのままで淡々と話しているだけだった
昼休みは大抵2人で屋上か中庭コースで買ってきた購買のパンを頬張りつつ、くだらない話から真剣な話までして終わるのだ
でも最近は“ちょっと”違っていた
教室から笑い声が響いていた。視線は逆方向へ流れた

「笑えない冗談?それともマジ?」
「多分マジ」
「へ〜で、単刀直入に誰よ?」
「・・・・・・」
ざあっと風が吹いた
強い日差しにこの風はとても心地よい
青々とした葉の緑がきらきら輝いていた

そして視線の先に居る「彼」

「んースコール?」
「・・・・・・は?」
中庭の、図書館の向かい側の、陽が当たるこの場所からいつも見える
彼は本棚から隠れた、奥の、窓際のあの席にいる

「昼くわねーのかなー」
「・・・・・・ああ、なるほど」
「かっこいいのにな〜」
「・・・で、最近ここな訳ね」
どおりで屋上は嫌がる訳か、とジタンはふっと見えないように笑った
そのまま手に持ってたサンドイッチを口に突っ込みながら、しばらくバッツを観察した。
今日ほど天気が良い日はないと思う。日差しがまぶしいのだ
「あ!」
「あ?!」
思わず立ち上がった

「今、見た?」
「いや、オレは見てない」
「そっか・・・」
バッツはようやく下を見た
陽にあたっている地面はとても暖かそうで思わず寝そべりたくなった
明日は雨が降るかな?

「明日もし雨だったら」
「うん?」
「図書館行こうかな?」
「はは、バッツが図書館とか。一生行かないと思ってた」
ジタンはしばらくバッツを見つめていた
今何を考えてる?おれの心の中は見えている?
今度はふわっとした風が流れた

「・・・やっぱり今行く」
「おーう」
まあ振られたらなぐさめてやるよーというジタンの言葉は青空へ飛んで行った
昼休みが終わるまであと15分
今の時間なら図書委員ぐらいしか図書館にはいないはず
はやく、早く、・・・はやくあの場所へ
階段がとてももどかしくて、一気に飛べたらどんなに楽だろうと思った

「・・・・・・」
バッツは息を整えてがらがらと扉を開けた
図書館の中には暖かい空気が流れていた
ほぼ人がいない空間は予想以上に静かな空間だった


「スコール」
声をかけられた当人はすごい驚いた顔をしていた
バッツは大きく深呼吸をした


視線ははじめから君だけに


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