apple pie
「スコール?スコールなら部屋に戻っちゃったよぉ?」
「また2人でデートでもするん?」
「あら、いいわね、私もスコールとデートしたいぐらいだわ」

3人同時に話しかけられて、サイファーはどれに返答するか一瞬迷った
任務前にスコールに用事があったのだ、しかし当の本人が見つからないときたもんだ

「部屋だな?」
「そうだよ、さっきゼルと一緒に戻っていったから」
あの金髪野郎と、つぶやきながらサイファーはすぐに外に飛び出ていた
「サイファーも金髪なのにね」
「ねー」


「スコール」
「・・・何か用か」
「用がないと来ちゃ行けねぇのかよ、つまんねーやつだな」
ったく、相変わらずだな
サイファーは勝手に椅子に座りこむと、スコールの飲みかけだったコーヒーをがぶ飲みした
それを見ていたスコールは小さく「ぁ」と声をあげた

サイファーはここ毎日、何かと理由をつけてはスコールに会っていた
特に用事はなかった、あるわけもなかった
しかし理由をもってこないと、会いたい本人は会ってもらないと学習したのだ

ふわっと少しぬるい風が部屋を流れて行った
まだ外の日差しは弱まることを知らないようだ

「あ、」
声と同時に鳴り始めた携帯を見た
任務まで1時間を切っていたのだ
サイファーは重い腰をあげて、キッチンから離れないスコールにマグカップを渡しに行った
「任務だったのか、時間は大丈夫なのか」
「あと50分ぐらいある」
「・・・全然大丈夫じゃないな」
こんな会話をするようになったのもかなりの進歩である
はじめのスコールといったら全く無口で無視されるのが当たり前だったからだ

あと、少し、もう少し
サイファーは確信していた、これは自分の勝ちだと


「・・・?」
その確信が崩れる瞬間が訪れた


視界に入る真っ赤なリボン
そしてその色を引き立てるような真っ白な少し小さな平たい箱
さらにメッセージカードつきらしく、淡いピンクのキラキラしたものがリボンからその輝きを覗かせていた

彼女はいないと思ってた
勝手に女はいないと思っていた

サイファーは頭の中が真っ白になった


「・・・サイファー?」
「それ、もらったのか?」
「え?」
スコールはサイファーの異変に気付いたらしい
いくらにぶくとも、サイファーは他人よりは比較的わかりやすかったからかもしれない
しかしこの重い空気に気がつかない訳はなかったのだ

「くそッ!」
「サイファー?!」
「いるならはっきり言いやがれ!もう会わねえよ!!」

まるで嵐のような勢いでサイファーは出て行った
それをスコールは茫然と見つめていた
入ってきた風が少し冷たかった

雨が降りそうだった

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