apple pie
その後のことはよく覚えてなかった
むしゃくしゃしていたことだけは確かだった
個人的にだ、そう、あくまでも個人的にだが
サイファーはもう少しだと勝手に思い込んでいたのだ
「くそ、いい気味だ、無様すぎる!」
とにかく物に人に八つ当たりしていた
それでも任務は“一応”完璧にこなしたはずだった
「サイファー!!あなたちょっとやりすぎよ!!あとで報告書ちゃんと書いてもらうからね!!」
「たまには派手にやってもいいだろ?」
「おとなしくしてなさい!!」
キスティには書類をぶん投げられた
なかなかの怪力である
「あ、サイファー、今夜はデートじゃなかったの?」
「あぁ?!うるせーな!!あっちいけ!!」
今度はアーヴァインとセルフィコンビに捕まった
廊下をいちいちほかの生徒にあたりながら歩いていたサイファーを見かねての行動だった
空はすっかり星空へと幕を下ろしていた
「まあまあ落ち着いて、これでも食べなって」
「・・・」
そういえば、夕飯を口にしていなかった気がする
渡されたリンゴを丸かじりしてサイファーは少し落ち着きを取り戻した
「どうしてそんなにリンゴなんか持ってるんだ」
よく見ればセルフィはかごいっぱいのリンゴを持っていた
「ああ、これはね、スコールからのおそそわけ♪」
「はあ?」
「アップルパイ作ったんだってー!で、余ったからもらったわけ。
サイファー、アップルパイはおいしかった?リンゴ好きでしょ??」
「いいよねぇ、スコールの手作りアップルパイが食べられるなんて」
「ね〜?・・・ってサイファー?!」
歩いてきた廊下を一気に戻って行った
失敗したのだ、完全に
サイファーは息切れするぐらい走り続け、すぐ寮に飛び込んで行った
向かう先は決まっていた、最近毎日通い続けていた場所
「スコール!!」
入った部屋はいつものように静まり返っていた
「・・・ッ!」
部屋を見る限り、人の気配はなかった
サイファーは今日見たあの「白い箱」を探した
「・・・。」
「白い箱」はすぐに見つかった
わかりやすいぐらい、目に付いたからだ
もちろん、あの赤いリボンだって“同じ場所”にいた
中身はいなかったが、ぐちゃぐちゃにされてダストボックスに突っ込まれていた
あのピンクのカードもそこで輝きを失っていた
サイファーは溜息をついて座り込んでしまった
とにかく自分が悪かった、いや、自分が今も悪い
それだけは馬鹿でもわかる、それだけは
原形を失ったそれをとりだして簡単に元に戻そうとした
そう言えば、カードには何が書かれていたのだろうか?
サイファーはくしゃくしゃになったカードを手にとって文字を読み取ろうとした
インクが滲んでいたが、読めなくはなかった
「・・・『まずいかもしれない』って・・・」
簡単な言葉だった。
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